「今日思うことを、明日も思えるか」と考えるときがある。
考えること常日頃そしてそのための記録。

2011年5月7日土曜日

電車とマダムに起きたこと

夕方17時を過ぎて、一件の振込みを思い出した。
それで会社を出て、近くの商店街に向かった。

その行く途中の踏切で。
まもなく電車がくる。と、その時だった。
対岸の踏切バーの少し左に目をやると、レールの側におばあさんが。
…え。
初見はとても驚いた。「…人!」と。線路スレスレだったから。
というか踏切内だから。
おばあさんだった。おばあさんは、線路に咲いた花を摘んでいた。
(あぁ、花が摘みたかったのか)
両岸の踏切にいた人も皆、そのおばあさんを見つけてやはり驚いていた。
電車は始め、おばあさん側の線路を通過し、続けて反対車線で一本通過した。

本当にひやりとしていた。多分、そこにいた人、ひやりとしていた。

おばあちゃんは線路の横に避けてじっとしていた。ギリギリだった。
通過する電車は続けて汽笛を鳴らした。



おばあさんのところへ行こうと思った。
カンカンカンが鳴り終わって、バーが上がる。
ひとりのおじさんが渡り際に、
「だめだよ!早く出て!おばあちゃん。そんなところ、入っちゃだめだって!早く出て!」
おばあちゃんはぽかんと聞いていた。

踏切を渡って、おばあさんのいる方へ。
「おばあちゃん、こちらへ来れますか」
「…花があるのよ。家から見えるから知ってたのよ。今だって私はちゃんとよけていたのよ。ちゃんと」
「うん、そうですね。でもね、今はあぶないからね。こちらへ来れますか」
「。」
踏切から出てきた。
大声で叫んだおじさんは「線路の中なんだからさ!」
と言って、私と目が会うと去っていった。
おばあさんは目が泳いでいて、落ち着きがなく、しばらく黙っていた。
そして「あんな風に言われたこと、なかったのよ」と言った。

「そうか。きっとおじさんは心配だったんです。ここ、電車が沢山くるからきっと心配なんです」
「私、家から毎日見てるの。だからよく知ってるのよ。いつも花が咲いていて、採れるって知ってるの」
知っている。
私も一年前に同じ花を摘んだ。線路の外からだったけれど。
5分くらいおばあさんと立ち話をしてたら、目がさめたように
「…あなたどちら様?どうしてここに?」と聞かれたので
郵便局へ行きます、おばあさん気をつけて、と言って去った。

おばあさん「ごめんあそばせ」

なんかふわついた、喜怒哀楽どれにもくくれない変な気分。
振込は支店名がわからず不発。
もう不発弾の気分で会社に引き返す。

踏切まで引き返し、おそるおそる線路内を見る。
おばあさんはいない。
よかった。

そうして踏切が上がるのを待っていたら、
向かいの家のベランダから、あのおばあさん。
…あ。
おばあさんは無表情のまま、持っていたバナナを剥いて、
その皮を線路に思い切り投げた。
線路の間に、ぼたり。
…え。
そして、線路を眺めてバナナを食べていた。
目が合ったかどうかの刹那の極みで、私は目をそらして会社へと戻った。

オウ、シュール。それ以外のなんでもね。
tone

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