森の中を歩いていた。
いつから歩いていたんだろう。
もうそれほど日の明かりもない。
日没までに、辿り着きたい場所がある。
この風のにおいからすると
明日は夕方から雨みたいだから、
用事を済ませたら、すぐに折り返したいのだ。
洗濯物を干してきたから。
まもなく、ほんのわずかな枝の隙間から
森の終わりが見える。
きっともうすぐだ。
森の茂みを抜けると、そこにはどろんとした沼があった。
沼をまっすぐ突っ切った先には、あの家。
私のもうひとつの家。
古くなって使えなくなった、大切なもの。
そういうモノを、私はあの家に大切に保管している。
そこにしまっておきたいのだ。
けれど、沼がある。
どうした。いつから、こんなものができたのか。
どうにか渡らなくては、手にしたものが粉屑になってしまう。
夕刻はそこまで迫っている。
どうして沼がある?
手にしたものは、大切だったのか?
もう一度手を開いてみると、
手のひらから、白い粉が生ぬるい風に吹かれてササラササラ。
飛んでいった。
沼は相変わらず、深い色で私を眺めていた。
tone
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